今や全国区の人気となっている、岩手県を代表するご当地グルメ「盛岡冷麺」。その人気の火付け役となったと言われているのが、盛岡を中心に店舗を展開するレストラン「ぴょんぴょん舎」です。
近年はECサイトの通販事業にも力を入れており、ACROVEでは様々なサポートを行なっています。今回は、「ぴょんぴょん舎」を運営する株式会社中原商店様 代表取締役社長の邉龍雄様と、EC事業を担当している小野高史様に、「ぴょんぴょん舎」誕生のエピソード、商品づくりへのこだわり、そしてACROVEとの協業で推進しているEC運営について伺いました。

不況下の事業転換から、盛岡冷麺のパイオニア的存在へ

ーまずは、中原商店様の事業と創業以来の歴史について教えてください。

邉 様:中原商店は、冷麺・焼肉などを提供するレストラン「ぴょんぴょん舎」を、盛岡を中心に東北・関東で10店舗運営しています。また関連事業として、セントラルキッチンで生産した冷麺の麺やスープなどの製品の卸売り、通販用商品の小売りを行うメーカー事業、使用する食材を自社生産する農業や、契約農家との協業によるお米や野菜の生産、従業員向けの保育所の運営なども行っています。これからは、外食事業だけでなく食品メーカーとして冷麺を中心に様々な商品の展開を拡大したいと考えています。
中原商店が現在の業態になったのは、1987年(昭和62年)。先代の父は、それまで盛岡で鉄・スクラップの加工処理業を営んでいました。父が病に倒れたのをきっかけに当時東京にいた私が事業を引き継いだのですが、私が社長になってから5年ほどで世の中は円高不況に陥り、鉄・スクラップ加工処理事業が国から「構造不況業種」に指定されてしまいました。同時に、構造不況業種に対しては事業転換の支援をするという方針が打ち出され、中原商店は岩手県の事業転換第1号としてレストラン業に転換することになったのです。
レストラン業を選んだ理由には、当時はまだ「盛岡冷麺」というブランドも一般的ではない時代でしたが、盛岡の冷麺には地域を活性化するポテンシャルがあるという考えが地元商工会や観光協会を中心に盛り上がっていたことが挙げられます。開店前には行政と一緒に全国の様々な物産展を視察したり、実際に物産展に店舗を出して高い評価を得られました。そして、行政が主催した「日本麺サミット」というイベントの開催にも関わり、そこで出店したお店「ぴょんぴょん亭」は報道を通じて全国に発信されて、それがきっかけで開店の準備が加速することになりました。創業のきっかけは不況でしたが、その当時の「盛岡冷麺を全国区の名物にしよう」という地元の動きをチャンスに変えて、事業を立ち上げたのです。

株式会社中原商店 
代表取締役社長

邉 龍雄様

ー会社のピンチをチャンスに変えて、そして盛岡冷麺の普及にも尽力されながら事業をスタートさせたのですね。この「ぴょんぴょん舎」の冷麺を美味しくするためのこだわりについて教えてください。

邉 様:レストランの開店以来、冷麺の命とも言える「スープ」「麺」「キムチ」の研究には徹底的にこだわってきました。また、一般的に冷麺にはキムチを入れた状態で提供されますが、辛いものが苦手な方でも楽しめるよう、今では盛岡冷麺の食べ方のスタンダードになっている「辛味別」という食べ方を考案しました。ただ、本来盛岡冷麺のスープはキムチの味が加わることで味が整うもの。そこで、キムチを入れなくても十分に美味しいと思えるスープを徹底的に研究しました。

ー味の基本となる「スープ」「麺」「キムチ」の研究のみならず、お客様の好みに合わせた美味しい食べ方まで考案されたというのは驚きです。

邉 様:もうひとつ、私たちには譲れないこだわりがあります。それが「麺」です。「ぴょんぴょん舎」の冷麺は、練った麺をそのまま搾り、絶妙な時間で茹でて締めてお客様に提供しています。いわゆる「作り置き」は一切していません。冷麺は、うどんなどと違い、出来上がった瞬間が最もコシが強くて美味しく、時間が経つとすぐに味が落ちてしまう食べ物です。盛岡冷麺を最も美味しい状態で召し上がっていただくために、作るタイミングや茹で時間には徹底してこだわっています。

お店のおいしさを、そのままご家庭でも・・・
品質への徹底的なこだわり

ーそんな「ぴょんぴょん舎」の冷麺ですが、創業初期から持ち帰り商品を展開していたと伺っています。非常に繊細な冷麺を持ち帰り商品にしようと挑戦された背景にはどのような思いがあったのでしょうか?

邉 様:盛岡冷麺が盛り上がって様々なメーカーが盛岡冷麺を商品化していく中で、そのような商品を食べたお客様から「ぴょんぴょん舎の冷麺と全く違う、美味しくない」というご意見が多数寄せられるようになりました。そこで「ぴょんぴょん舎」の冷麺をそのままご家庭で楽しめる商品は作れないかと考えたのです。熱を一切通さない完全生麺を真空処理してデリケートな麺の品質を維持して、キムチは漬けたものをそのままパックし発酵が進むことで、ご家庭で食べる際に一番美味しい状態になるように。スープは低温殺菌することで品質維持と保存の両立をはかりました。

ー現在では通販事業を通じて冷麺だけでなく様々な商品を全国に展開していますが、持ち帰り商品を始めた頃と比較して品質の維持管理はどのように変化しているのでしょうか?

邉 様:技術の進歩と製造拠点への投資によって、品質の維持管理は大きく向上しています。冷麺の持ち帰り商品を始めた頃はまだ製造拠点がなく、通信販売を始めた当初も6畳くらいの作業場で製麺やパック詰めを私が手作業で行っていました。岩手県が商品をPRしてくれたときは通販で2000食ものオーダーが入り、それらも全て作業場で捌いていたのです。しかし現在では温度管理、湿度管理、衛生管理、HACCP対応が十分に行われている生産拠点で商品を生産していますので、品質の維持は十分に保たれていると自負しています。

専門的なノウハウも十分な運用リソースもないなか、
楽天市場に出店

ー現在はECでの販売にもビジネスを拡大されていますが、ECでの販売を行うに至った経緯を教えてください。

小野 様:本来はご家庭用、贈答用として電話やFAXで通信販売の注文を受けて店舗で注文を処理してきましたが、自社ECサイトも早期に立ち上げて電話やFAXでの注文を徐々にECに転換していきました。商品については、社長の邉が話す通り「お店の味をそのままに」という考えから店頭販売のテイクアウト商品、スーパーなどに卸す家庭用商品、ECなどの通信販売商品で全く同じものを販売しています。

小野 様:立ち上げ初期は、ECサイトでも独自に集客施策や売上アップをはかっていきたいという思いから自社独自でECサイトを運営して、キャンペーン展開などによって会員数も増加していったのですが、一方で自社単独では手が回り切らないという課題も浮き彫りになっていきました。テレビ露出などによる特需を除いて、売上はほぼ横ばいで推移していったのです。
そして当時は、利益率なども考慮してモールへの出店は控えて自社ECに注力していたのですが、自社のノウハウや集客力には限界があると感じている中、2021年に岩手県でネットショップ出店の補助事業を活用する形で楽天市場に出店しました。しかし、出店から1年ほどは、当初は軽い気持ちで出店したこともあり、特に集客や売上アップにつながる具体的な施策を展開することはありませんでした。単純に店舗を構えているだけでしたので、残念ながら大幅な売上アップとはなりませんでした。
こうした状況を打開するために、売上アップ施策など楽天市場での運用をサポートしてくれるコンサル会社を探し始めたのが、2021年。ACROVEさんを含めて数社のサービスを検討しました。

―自社で楽天市場の店舗を運営していたときには、どのような課題を抱えていたのでしょうか?

小野 様:「課題が見えないこと」が課題だったと思います。売上アップのために、何をすればいいのかわからない。担当者の私も兼務でECサイトの運営に携わっているので、まず何から手をつければいいのかわからない。楽天市場で売上を上げるためのノウハウもリソースもないという状態でした

ACROVEは、自社ECの成長も見据えた「設計図」を
示してくれた

―様々なコンサル企業の提案を受ける中で、ACROVEを採用した決め手はなんだったのでしょうか?

小野 様:各社からは様々な施策の提案を頂いたのですが、その中で 向こう1年ほどの収支計画まで提示してくれたのは、ACROVEさんだけでした。 また、 楽天市場で培ったノウハウや獲得したお客様を自社ECサイトの活性化に活かすという計画を立案してくださったのも大きかったと思います。立ち上げ当初は楽天市場でのビジネスをどれくらいの期間でどこまで成長させるのかというプランも明確ではない状態で、一方で利益率の高い自社ECに注力した方がいいという意見も社内にはある中で、 自社ECのビジネス活性化を視野に楽天での顧客獲得・売上アップを進めていくという「設計図」を提示してくれたのが、ACROVEさんでした。

―ACROVEでは、楽天市場における「ぴょんぴょん舎」の商品の良さを多くのお客様に伝えるために、店舗の基盤づくりや広告施策の展開、セール時の売上最大化に向けたキャンペーン施策の立案などをサポートさせていただいています。ACROVEとの協業についてご感想をお聞かせください。

小野 様:施策立案にしても効果分析にしても、ノウハウが全くないところからのスタートでしたので、現在も日々勉強させていただきながら一緒に取り組んでいます。経験値も蓄積されてきていて、実績の分析でも今まで着目していなかった部分に気付かされたり、ノウハウは着実に得られていると感じています。例えば、注文を細かく分析すると、来訪者のコンバージョン率は高いのですが、既存顧客からの注文が多かったのです。新規顧客の獲得が今後の注力ポイントになっていくと考えています。

運用代行で売上300%アップ!
ACROVE と共に事業を成長させたい

―ACROVEとの協業を通じて、集客や売上などで定量的な効果は見られましたか?

小野 様:売上高については協業を始めてから単月で300%ほど成長しており、サポートを始めていただいてすぐに効果が出て大変驚いています。RPP広告の展開やクーポン施策などにより口コミの醸成に注力したことが目に見える効果を生み出しているのではないかと思います。またリソースについては、現在運用のほぼ全てをACROVEさんにお任せしていますので、自社リソースの負担なく売上が300%成長したというのは本当にありがたいと思っています

―今後の中原商店様のECビジネスの展望や、ACROVEへのご期待について教えてください。

小野 様:まずは、更なる売上アップについて、「ぴょんぴょん舎」の中規模店舗に並ぶくらいの売上規模を目指してACROVEさんと一緒に取り組んでいきたいと考えています。今まで盛岡冷麺を体験したことのない新しいお客様の獲得にも注力して盛岡冷麺の市場拡大にも貢献したいですし、お客様のニーズをもとにECを端緒にした新しい商品づくりなどのチャレンジに取り組み、その成果をレストラン店舗にもフィードバックできるような循環もできたら嬉しいですね。また将来的には、ACROVEさんとの協業によって様々な知識や経験を蓄積して、自社のリソースで運用できるよう段階的に内製化することを目指していきたいと思いますが、一方販売促進予算をどのように活用して施策を展開していくのがベストなのか助言をいただきながら一緒に考えていければ と思っています。また、商品開発についてもEC運用の観点からご意見をいただいたり、ECサイトを通じて寄せられるお客様のニーズにも耳を傾けたりしながら、一緒に「ぴょんぴょん舎」のビジネスを盛り上げていければと思っています。

小野 様:レストランで提供している味をレストランで提供している方法で作りそのままご家庭にお届けしているという私たちのこだわり、品質の高さ、そして食と健康への思いをACROVEさんの力も借りながら一緒に伝えていければいいですね。加えて、ご家庭で美味しく味わっていただくために、ご家庭での正しい調理方法についてもしっかりとPRしていきたいと思います。「ぴょんぴょん舎」の冷麺で“本物の盛岡冷麺の美味しさ”に触れていただき、商品をリピートしていただけるようになれば、そこに大きなコミュニティが生まれ、盛岡冷麺のファンがもっと増えていくのではないかと思います。

―最後に、中原商店様のビジネスに対する思いをお聞かせください。

邉 様:当社の社員には、中原商店の基本・原理・原則をしっかり踏まえて、真摯に、誠実に、誠意を込めて仕事をすることが大切だと常々伝えています。困難なことでも、信念を持って真摯に向き合い、諦めずに成し遂げること。これは様々な困難に直面している日本のビジネス環境を生き抜くためには、不可欠なものではないかと考えています。お客様のことを思い真摯に誠実に向き合い、誠意をもっていい商品を作り続けること。そしてその姿勢を徹底してお客様を信じれば、利益は後からついてくる。お客様のことを思い謙虚に仕事をすれば、お客様が私たちを生かしてくれる。これがビジネスの全てではないかと思います
だから、私たちはECでのビジネスが拡大しても商品の製法や品質を一切変える気はありません。これからも、私たちの信念を貫いて、美味しくて身体にいい食品をお客様に提供していきたいと思います。こうした強い思いがECサイトを通じてお客様に伝わり、たくさんの方に共感してもらえたら、こんなに嬉しいことはありません。

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