国内外で注目されている、ECロールアップをご存じでしょうか?

人的リソース不足、資金不足、マーケティングノウハウ不足、もしくは事業承継等で悩まれているD2C・ECブランド事業者様に対して、 M&Aを通じてブランドを譲受け、ブランドの更なるバリューアップを実現することです。当社ACROVEでは、これまでEC支援事業を通じて培ってきたノウハウ等の社内リソースを投入し、より多くの消費者様に商品を届けていくことを目的とした「ECロールアップ事業」を展開しております。

その中で、今回は2023年5月に当社が子会社化したイー・エム・エーをご紹介します。イー・エム・エーは1997年に宮城県で創業した、プライベートブランドの輸入、企画、販売、卸売などを手掛けるメーカー兼商社。EC通販事業をインターネット黎明期から展開し、楽天市場、Yahoo!ショッピングなどで賞を受賞するなど、顧客満足度の高い商品を展開しています。そうした中、イー・エム・エーはACROVEへの事業継承によって何を目指しているのでしょうか。イー・エム・エー 専務取締役の村上 礼子様と、ACROVEから業務出向して副社長執行役員を務める林 龍之介にお話を伺いました。

「他社と違うこと」模索し続け、
ネット創世記からネット通販に注目して挑戦を続けた

ーまずは、イー・エム・エーが創業した経緯とこれまでの歩みについて教えてください。

村上 様:創業する以前、私と創業者の遠藤雅信(前の代表取締役社長)は外資系信販会社にいて、遠藤が独立起業するのを機に、私も遠藤が宮城県で創業した会社(現在のイー・エム・エー)に参画したというのが始まりです。最初は、地元密着型の携帯電話販売店の運営から事業をスタートさせ、宮城県内で4店舗ほど経営していました。

その後、創業当時(1997年頃)から注目されたインターネットに着目して、携帯電話販売店のサービスの一部をオンラインで対応できるようにしたほか、同時期に国内でもサービスが始まった「Yahoo!オークション(現在のヤフオク!)」で、国内の様々な商品を仕入れて販売するオークション通販事業を開始しました。

ーインターネット創世記からEC通販ビジネスに注目されていたんですね。

村上 様:「何か他の会社と違うことはできないか」ということを常に考えながら、ビジネスのシードを模索し続けていたというのが当時のイー・エム・エーだったと思います。オークション通販事業でネット通販の可能性を実感すると、この通販事業をより拡大していこうと舵を切り、楽天市場やYahoo!ショッピングに出店して、海外から輸入した商品を自社ブランドで販売する事業へと拡大していきました。最初はデジタル家電から商品を展開し、当時の時流と相まって大きなビジネスになりました。

EC通販事業の黎明期から意識していたのは、お客様に信頼される店舗になるということ。ECの黎明期はお客様も取引の安全性・確実性に対して半信半疑だったのです。その後、ECの認知度も高まりネットで購入することが当たり前の世の中へと変化していきましたが、そこでも選ばれる店舗になるためには、ユーザーレビューの評価やお客様窓口での対応などを通じて店舗への信頼を獲得していくことを大切にして事業を展開してきました。

ーここまでお話をお伺いして「利益を生み出すためには何ができるか」を常に模索してフットワーク軽く新しいことに挑戦されている印象を受けました。

村上 様:そうですね。創業者の遠藤は「何事もトライしてみて、上手くいかなかったらまた次のトライをする」という考えで会社を経営してきました。商品を販売する際にも、まずは少ない在庫からスタートしてお客様の反響を見てアクセルを踏むか、踏まないのかを決める。特定の商品ジャンルにこだわるのではなく、幅広く可能性がある商品を販売してみる。そこではもちろん失敗もたくさんあったのですが、そこから学び新しいチャレンジをしてきたからこそ、今のイー・エム・エーがあるのではないかと思います。

ー付加価値のある様々な商品を探し出し、お客様に提案し続けた結果、現在展開されている様々な自社ブランドの構築に至ったのではないかと思いますが、取り扱う商品を見極める際にこだわってきたポイントなどはありますか?

村上 様:お客様の利用シーンを第一に考え、お客様にとってシンプルで便利なもの、時短につながるものを軸に商品を探してきました。商品を購入したお客様に喜んでいただけるかが最も重要です。また、マーケットを広く俯瞰して「こんな商品、他にないな」「この商品、もっとこうだったらいいのに」という視点も大事にして、社員の意見やECモールでの他社の動向にも注目しながら取り扱う商品を考えています。

創業者が叶えられなかった目標を、ACROVEに託したい

ーネット黎明期から様々な挑戦を続けてこられたイー・エム・エーですが、今回M&Aによって当社との協業を選ばれた背景について教えてください。

村上 様:実は、私たちイー・エム・エーは創業当時に「10年で上場する」という目標を掲げていました。しかし現実は厳しく、実現には至りませんでした。そんなときに金融機関系のM&Aコンサルタントから声が掛かり、最初は勉強させてもらうつもりでお話を伺いました。そして実際にイー・エム・エーに興味のある会社を探してみるといくつかの会社からコンタクトを頂き、その過程でACROVEさんからもM&Aのお話をいただきました。

創業者の遠藤は2年ほど前から事業の成長に伸び悩みを感じていましたし、目標であった上場も果たせなかったということもあり、「事業の成長や上場という目標を若い世代に託したい」という思いは強かったです。遠藤は常々「会社は株主のもの、そして会社は末代まで続くもの」ということを言っていました。会社を継承して新しい世代に事業の成長を託したいという思いが強かったのです。そうした中でACROVEさんからお話をいただき、もの凄いスピード感でとんとん拍子に話が進んでいきました

ーあっという間にM&Aの話が進んでいくことに戸惑いなどはありませんでしたか?

村上 様:私は何度も「本当に売却していいんですか?」と聞きましたが、最終的には遠藤自身の意向を尊重することになりました。ビジネスを成長させるためには、何かを変えなければなりません。イー・エム・エーは創業して長い会社ですが、長ければいいというものではなく、そこには新しい考えや変化が必要で、スピード感がなければ成長できない時代でもあります。それこそ、イー・エム・エーが抱いていた課題でもありました。

そう考えていたタイミングでACROVEさんからM&Aのお話を頂いて、本当に良かったと感じています。ACROVEさんに集結した素晴らしい社員の皆さんのお力を借りながら事業が推進できるというのは、イー・エム・エーにとってメリットでしかないと考えています。

ーM&Aの交渉を進める中で、当社に対し、そして面談した代表取締役の荒井や役員の山田(現在のイー・エム・エー代表取締役)に対してどのような印象を持ちましたか?

村上 様:ACROVEさんは若い企業ながら、名だたる投資家やVCから資金調達を実現して急成長している企業で、純粋に「凄い会社」という印象です。また代表の荒井さんは人柄も良く人を惹きつける魅力を持った方で、山田さんも数多くのキャリアをお持ちの方で、M&Aの経験も豊富な方。この2人の周りに様々な強みを持った方々が集まりチームを作り急成長されている。そして何よりもブランド価値というものを大切にしながら「良いコマースを」というスローガンの下で事業を推進されている。ここにEC通販事業を推進するイー・エム・エーとのシナジー効果があるのではないかと感じました。

ちなみに、ACROVEさんだけでなく別の会社からもお話をお伺いしていましたが、その会社はリアル店舗を中心に事業を展開する企業で、EC通販事業を中心に事業を展開する当社とはシナジー効果が期待できないと考えました。M&Aは「1+1=2」ではダメだと思うのです。「1+1=3」にしなければなりません。その効果が期待できるのが、ACROVEさんとの協業ではないかと考えています。

ACROVEとの協業で生まれた変化と手応え

ー当社への事業継承が完了して協業が始まり、当初のイメージと現実にギャップなどはありませんでしたか?

村上 様:協業前のイー・エム・エーはアナログな手法での業務が多かったので、チャットを多用したコミュニケーションや業務を推進していく中で人と人の繋がりがどんどん生まれていくスピード感には、業務を管理していくという部分で戸惑う部分も実際ありましたね。しかし、社員の中でも若い人たちはそうした変化にも付いていっていますので、あまり心配はしていません。

また、山田さんや林さんをはじめ、たくさんのACROVE社員の方がイー・エム・エーに入って仕事を進めて頂いているので、社内が話しやすい風土、自分の考えや新しいアイデアをアウトプットしやすい環境になってきているとも感じています。今まで事業の方向性は1人で考えることが多かったのですが、それをチームで考えられ、スピード感をもって推進できる点が良いと感じています。

ー今回のM&Aで、当社からの出向という形で副社長に27歳の林龍之介が就任しました。就任が決まった時にはどのような印象を持たれましたか?

村上 様:林さんはお若いですが既に自身で会社を立ち上げてブランド事業を展開した経験もお持ちの方で、非常に優秀な方だという印象を持ちましたね。当社の社員とも目線を合わせてくれて「一緒に会社を成長させましょう」とおっしゃってくださり、社員たちもやりやすくなっているのではないでしょうか。中小零細企業が数多くある中で、「上場を目指して事業を成長させましょう」という目標を掲げて仕事ができる機会があるのは非常に貴重ですし、私自身もそのメンバーに加わることができて嬉しいですね。創業者の遠藤の夢を託せましたし、これから事業の成長を強く推し進めてくださると期待しています。

ビジネスの課題を改善し成長させるために必要なこと

―林さんにもお伺いします。イー・エム・エーの副社長に就任されたことへの思いを教えてください。

林:内示が出たときには期待や不安などいろいろな感情がありましたが、やりがいのあるチャレンジングな仕事に取り組めるチャンスを頂いたことは非常に光栄に感じています。

イー・エム・エーはACROVEよりもずっと長く事業を続けてこられた会社です。社員の皆さんとのコミュニケーションや信頼関係の構築を考えて、どうすれば改善すべき方向に進められるかを考える必要があり、非常に責任の重い仕事だと感じています。M&Aで買収した企業で事業を展開するというのは「100を1000にする仕事」で、単純に経営指標だけを評価すれば「ここを改善すれば事業が成長する」と言えます。しかし、それを実現可能なアクションに落とし込んでいくためには、まずイー・エム・エーの社員の皆さんに私自身を受け入れてもらえなければなりません。

―これからどのようにイー・エム・エーを成長させ、創業者から託された目標を目指していくのか、抱負をお聞かせください。

林:まず中期的には、現在の事業で改善できる点を洗い出して、ひとつひとつ改善をしていくことで、着実に利益を創出できる企業にしていきたいと考えています。既存のブランドにおいてもブランド価値の確立と向上のためのリブランディングが必要ですし、また、EC事業全体では適切な商品を適切なタイミング、適切な価格設定で販売する、という販売戦略もより改善する必要があります。その中で、社員の皆さんやお客様に「ACROVEと協業して良かったよね」と思っていただければ嬉しいですね。そして長期的には、経営環境を改善した上で成長が見込める新しい事業への挑戦など、上場という目標に向けて会社の更なる成長を目指していければと考えています。

イー・エム・エーを東北地方で一番入社したい会社に

ー最後に、ACROVEとの協業によって生まれるシナジーへのご期待についてお聞かせください。

村上 様:イー・エム・エーは東北・宮城で創業し、2011年に発生した東日本大震災による被災も社員みんなで支えあって乗り越えながら、社員を家族のように大切にする会社としてこれまで経営してきました。社内には小さいときに震災を経験した若い社員も多く、彼らにはACROVEさんとの協業によってこれから大きく育っていってほしい。震災の経験をした宮城の地で育ち、イー・エム・エーで活躍して会社が成長していくことで、東北のビジネスがもっと注目されればという思いがあります。

また、ACROVEさんとの協業によって社員の意識が変わり会社が成長すれば、地元に新たな雇用が生まれる機会にもなります。残念ながら、東北地方ではM&Aによって成長を実現した企業というのがこれまであまり存在していません。しかし、私たちがACROVEさんと一緒に先駆者になることで「東北地方で一番入社したい会社」を目指していきたいですね。また一方で、ACROVEさんにとっても「M&Aをして良かった」と思っていただけるよう、林副社長と共にこれから会社を成長させていきたいと思います。

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イー・エム・エーは、1997年に宮城県で創業したプライベートブランドの輸入、企画、販売までを行うメーカー兼商社です。東北・宮城県を中心に、家電からアウトドアブランド、カー用品まで販売するメーカー業と通販業者などへ商品を卸す卸売業の2事業を展開しております。

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